就学時前に手術を行って

目次

はじめに

 

 

妊娠中は順調そのものだったのですが、出産後すぐに異常が分かり、分娩とは別の病院へ搬送され、“先天性奇形症候群”(Goldenher症候群)と診断されました。

異常箇所は、眼・肺・脊椎に奇形が認められ、NICUから今現在も小児専門病院に定期的に通院しています。

 

最初の定期検診

整形外科は先天性側弯で正常の臼のような形の脊椎が三角形のようになってしまっている奇形が腰のところに1か所あり、約半年に1度ペースでレントゲン検査を行い脊椎のカーブのチェックをしてもらっていました。

 

手術の時期的にも症状としても今がベスト

6歳を迎えたころ、自覚症状はありませんでしたが、ややコブ角の傾くペースが速くなり、見た目も以前に比べてカーブが目立つようになり、数値としてはぎりぎり手術対象外でもう少しねばれそうだったのですが、主治医や整形外科スタッフ皆さんだけでなく、こちらの慶應義塾大学病院の先生ともコンサルテーションを行っていただいた結果、時期的にも症状としても今がベストと判断され、私たち両親にも説明があり、小学校入学に間に合うようにと手術を行うことを決心しました。

 

一日でも早く娘の身体が元気に

決心といっても、娘にとって2度目の手術。本人は覚えていませんが、2歳の時に脳外科の難しい手術を行っていたり、気管支炎や喘息で入院経験は豊富になってしまっていたりするので、一日でも早く娘の身体が元気になってくれればという気持ちが一番でした。

ただ、いつも診ていただいている病院では側弯の手術を行っていないということで、都内2か所の病院を紹介され、通いやすい慶応義塾大学病院に決めました。

 

専門病院での初めての外来

 

紹介後すぐに外来へ行き、その患者数の多さや施設の大きさに驚きました。

 

側弯症の外来では

全国でも側弯外来があるのは何か所もあるわけではなく、みなさん遠方から大変苦労なさって通われているのが印象的でした。

 

当然待ち時間も長く、子供はすぐに飽きてしまうので、手を変え品を変え折り紙・お絵かき帳・シール・絵本・ipodなど持って行った記憶があります。

 

手術への段取り

外来ではすぐに手術に向けての話が進み、まず術前検査入院があること、そして本番の手術があることを教えてもらいました。

 

また様々な文書や同意書があり既往歴や予防接種などの記録も記載、記入が多かったので母子手帳は欠かさず持って行っていました。また医療費やその助成や還付の相談にも専用窓口がありますので、そちらで詳しく教えていただけました。

 

手術前検査入院

 

採血やレントゲン、CTなどを行いました。

 

痛い検査は採血だけ、そして数日と短い期間でしたので、入院慣れしている娘はあっという間にプレイルームを見つけ、遊んだり、スタッフの方や同室のお子さんや付き添いのお母さまとおしゃべりしたり…意外とのんびりと過ごしていました。

 

また、喘息を患っているので、麻酔科の先生や呼吸器科の先生とも連携を取り、手術までは感染症を起こさないこと、喘息発作を起こさないことが目標になり、毎日予防のための薬を飲み、2ヵ月後の手術に備えました。

 

手術のための入院

 

最初の1週間は体調管理のため大事をとっての入院開始でした。

 

面会時間などのこと

かかりつけの小児病院は24時間面会可能なのですが、この環境はまだごくまれなようで、19時までの面会が親子共にとてもさみしく感じられました。

 

共働きで父親は土日しか来られず、母の私もどんなに早く職場を出ても1時間弱の面会時間しか取れず、ちょうど夕食時間のフォローと昼間の報告やほんの少しだけの遊びで、すぐに時間は過ぎていきました。

 

胸が締め付けられる想いの日々

面会終了の放送が入ると「もう行って!」と自分の気持ちとは裏腹に、寂しさに背を向けてグッと我慢している姿に見送られながら病棟を後にするのは胸が締め付けられる想いの日々でした。

 

でも、そんな姿に逆に成長を感じたり、前向きに感じたり。身体だけでなく心も強くなれると信じた瞬間でした。

 

手術の説明

主治医や執刀医を交えての手術の説明は図も描いて下さり、手術のアプローチ法、時間、合併症や今後についての話もあり、言葉もゆっくりかつ分かりやすいものでしたので、こちらからはあまり質問はありませんでした。

時間もまた、お忙しい中、こちらの都合に合わせて下さったのでとても助かりました。

 

いよいよ手術

 

手術前日は昼間から病棟へ行くことができ、看護師さんが気を利かせてくれて2人で病棟とお風呂に入ることができました。

 

また小さな身体にメスを入れるのは親として申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、意気地がない、逃げ出したいのは親の私の方だったのかもしれません。

 

娘は少し興奮しつつも「はやくごはんがたべたいなぁー。でもおかゆは苦手なんだよねぇ」といつも通りの会話でいつも通りに眠ったそうです。

 

手術当日

予定よりも開始時間が早まり、最後の最後で泣き出してしまった娘。手術室へ向かう曲がり角までずっと手を挙げていました。

 

手術そのものはスクリューを4本使って固定するもので、側弯の手術の中では軽度の方だそうです。付添の待機はICUのソファーでずっと新宿の高層ビルと手前の木々を眺めていて、その景色はずっと忘れられないものだと思っています。

 

手術後

予定時間通り4時間ほどでICUに戻ってきました。

 

麻酔で眠っているかと思ったら、なんだかとても賑やかで、鎮痛剤が投与されているにもかかわらず、会話は出来て、第一声は「トイレーーーー!!!」でした。

 

術中術後は導尿もしていますし、オムツもつけているのですが、ずっとずっと「トイレ」と言い続けたまま、両親退室となってしまいました。でも、それくらい話せるなら「大丈夫!」と確信、そして安心し、無事成功した!と感じました。

 

 

術後から退院まで

 

痛みについて

1日目はまだ痛み止めの効果が強く、言動もぼんやりしたものでしたが、2日目には立ってゆっくり歩くことができたり、自分で疼痛コントロール薬のボタンを押したりと意識もはっきりしてきました。

 

鎮痛薬が弱くなるにつれて痛みは感じていたようですが、とても我慢強かったらしく、座薬も一切拒否。投薬量も最小限だったそうです。(娘の頑固な性格がよく出ています…)

 

点滴が取れると活発になり、プレイルームで遊ぶ姿に明るい笑顔が戻ってきました。

 

最初のギブスについて

そんな矢先に待っていたのが次の試練のギプスです。かなり大がかりなものになってしまい、術野は10cm足らずですが、脇からお尻のところまでがっちり固められ、これには娘も「イヤイヤ!」

 

お腹は呼吸や食事が摂りやすいようにと穴を開けますが、「ドラえもんのポッケだよー」とユーモア交え緊張感を解こうとする先生をよそに「そんな風に開けたら雷さまにおへそを食べられちゃうからイヤ!」とまたも猛反発。

 

ギプス中はお風呂には入れないので清拭とシャンプー、トイレや着替えの介助のほか、物を拾う作業はフォローしました。それ以外は自分で試行錯誤して日々順応していっている様子でした。

 

手術から12日目

 

退院

心配していた術後後遺症や合併症もなく順調な経過だったため予定よりずいぶん早く退院することができました。

 

もう次の患者さんが控えていらっしゃるということで、ステーションの看護師さんたちと簡単なご挨拶のみで時間厳守退院となりました。

 

手術から半年の間

 

苦痛になるコルセット生活

退院から2週後、ギプスが外れ、今度は娘専用のコルセットが完成しました。

 

術後で体力が落ちていて、下の子用のベビーカーや車いすにお世話になることもしばしばありました。そのためやコルセットの1-2kgが体重15kgほどの娘にはとても重く感じられるのか、締め付けも嫌なのか、コルセットをしていた半年間は辛かったかと思います。

 

唯一お風呂の時と就寝時に外せる開放感は安堵の表情がみられ、入浴を終えるとよく追いかけまわしてコルセットをした思い出があります。

 

コルセット生活に慣れるまで

でも、大事な、大事な、娘を守ってくれるコルセット…娘の為に作ってくれたコルセット。イヤイヤだったコルセットですが、日に日に慣れてきて、最終的には自分で背中のテープに手を回し装着できるほどになっていました。

 

保育園でも保育士さんから娘の病態やコルセットの意義を分かりやすく説明してくださり、本人はイヤでもお友達から何か言われることは一度もありませんでした。それより、みんなが気遣って優しく守ってくれる姿が随所にみられたのが感動的でした。

 

その後、卒園があり、小学校入学がありました

 

 

就学相談や学校側への説明

入学前には自治体の就学相談へ行ったり、実際に校長先生や教頭先生、養護教諭の先生と面談も行ったりして事前に様々な情報を提供し、学校側も好意的に迎え入れて下さいました。

 

リュックでの通学

コルセットが外れるまではランドセルは保護者が持ち、またランドセルの代わりにリュックでもいいですという許可もでました。

 

体育や運動会

運動制限があったので、体育は準備体操をさらに軽くしたものを行い、先生方はぶつかったり、転ばないようにしたり、とても配慮して下さいました。運動会もダンス競技だけは参加させてもらえました。

 

コルセットとのお別れ

待ちに待った術後半年の診察ではレントゲン上もキズの治りも問題なく、長かったコルセットともお別れの日がやってきました。

 

最初のうちは恐る恐る公園遊具で遊んだり、体育に参加したりしていましたが、やがてみんなが遊んでいる光景に溶け込んでいました。

そして、さらに半年。手術から1年が経ち、無事に診察を終えることができました。

 

そして今

 

現在はかかりつけ小児専門医の整形外科に年に一度の定期診察に通っています。

 

肩の骨の左右差が気になっているところですが、側弯に関してはレントゲンを撮って「うん、いいね」と言う一言がどんなに嬉しいことか。年に1度のほめられデーになりますように。

 

手術から2年経った今でも、娘は日付と曜日は覚えているそうで、“2つのお誕生日”と言っています。幼い時期に手術はとても本人、家族共に悩み、精神的な負担も大きく、勇気のいることですが、就学前という大きなターニングポイントに実施できてとてもタイミングがよかったと思っています。

 

心配していた身長もずいぶん伸び当時100cmほどの身長が110cmを超えそうな勢いです。

 

痛みは忘れても、元気な身体と強い心を医療という力で娘に与えてくれた医師の皆様、看護師の皆様、そしてたくさんの医療スタッフの皆様に感謝しております。

 

最後の診察で”これが最後”とは思えずに普段どおり挨拶したのが悔やまれますが、こうやって何事も無く送り出してくれる先生方に敬意の意を表したいと思います。

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