脊椎の解剖
脊椎は7個の頚椎(首の部分の背骨)、12個の胸椎(胸の部分の背骨)、そして5個の腰椎(腰の部分の背骨)から構成されています(図1)。
正常な状態ではこの脊椎の形は正面から見ると真っ直ぐ、そして側面から見ると頚椎は前弯(前に凸)、胸椎は後弯(後ろに凸)、腰椎は前弯しています。脊柱側弯症とはこのような正常な状態からの逸脱を意味します。
※本来、椎体は胸部の方向に向いていますが、椎体の回旋のために、全く別の方向に向いています。さらに、回旋した椎体は右の胸部を変形させて右肺を圧迫しています。
すなわち、正面から見ると脊柱が左右に曲がっている状態(側弯)、側面から見ると正常範囲からの逸脱(胸椎部の過剰な後弯、前弯、胸腰椎部の後弯など)、そして、これらの変形に伴う椎体のねじれ(回旋)が脊柱側弯症の病態です。(図2)
脊柱カーブの測定の仕方
脊柱側弯症ではカーブの大きさをコブ角という角度で表します。目的とするカーブの椎体が一番傾いている椎体と椎体の間の角度を測定します。(図3)
※コブ角とは、目的とするカーブの頭側、尾側にある最大傾斜をする椎体の上縁下縁の線のなす角度。上記写真の第6胸椎と第1腰椎の間のコブ角は60度です。
側弯症の身体特長
脊柱が曲がってくるため、以下のような体表上の変化が生じる場合があります。(図4)
変化について
- 肩の高さの非対称
- 腰のくびれの非対称
- 体幹バランス不良
- 骨盤傾斜
- 肩甲骨部の隆起
ハンプについて
などが特徴的です。しかし、一番特徴的な身体額的特長はハンプです。体を前にかがめた時、背中、または腰の部分が盛り上がってきます(図5)。これをハンプと呼びます。一般にはこのハンプの大きさは側弯のカーブの変形が重度になっていくほど大きく目立ってくるようになります。
側弯症の原因
側弯症の原因には様々なものがあります。その中で一番頻度の高いものは特発性側弯症です。
特発性という言葉の意味は「原因が分からない」という意味です。特発性側弯症の原因を世界中の専門家が研究しておりますが、今のところはっきりとした原因は分かっておりません。
特発性側弯症
特発性側弯症は、その発祥年齢により乳幼児期特発性側弯症、学童時特発性側弯症、思春期特発性側弯症に分類されます。
色々な側弯症
そのほか、脊髄などの神経組織の異常を原因とした側弯症(神経原性側弯)、筋肉の病気を原因とした側弯症(筋原性側弯症)、椎体の奇形により起きる側弯(先天性側弯)、そのほかマルファン症候群などの結合組織の異常に伴った側弯症など、様々な側弯症の原因が分かっております。
また、これらの側弯症のほかに加齢現象を背景にした変形側弯症もあります。中高年齢者に発症する側弯症です。特発性側弯症と識別が難しい場合もあります。(図6)
側弯症の発生頻度(脊椎側弯症の場合)
報告者によってその頻度に多少の違いはありますが、装具治療の対象となる20-30度以上の側弯症は0.3~0.5%、すなわち1000人に3-5人いることになります。手術が必要な可能性が出てくる40度以上の側弯は0.1%以下です。
側弯症の治療法
治療法は1.定期的経過観察、2.装具療法、3.手術の三つに分けられます。
- 定期的経過観察: 3-6ヶ月毎の外来通院でレントゲン写真を撮影して側弯の進行の度合いをチェックします。(カーブの大きさ:コブ角25度以下の軽度の側弯症の方が対象。)ただし、25度以上の大きさであっても、年齢が15-16歳ぐらいで骨の成長が止まってきている場合にも定期的な通院だけで様子を見る場合があります。
- 装具療法は、骨成熟前(14-15歳以下)の方で、コブ角25度前後で開始します。装具は基本的に24時間着用(お風呂と体育以外)します。装具療法開始後は3-4ヶ月毎にレントゲンを撮り、カーブの進行の具合を確認します。装具は大きく分けて胸椎、腰椎の変形を制御する装具(TLSO装具)と、頚椎、胸椎、腰椎を制御する装具(CTLSO装具)です。多くの側弯症の方が治療に使用しているのがTLSO装具です。TLSO装具にはアンダーアームブレースやボストンブレースなどがあります。施設によってその形には多少の違いはありますが、矯正の理論は同じです。CTLSO装具の代表はミルウォーキーブレースです。より頭側に近い位置で大きなカーブがある場合、この装具が適応となります。
- 手術に関しては、別ページにてご紹介いたします。詳しくはこちら⇒手術のご紹介をご参照ください。